非認知能力

子どもの非認知能力を伸ばすには?親が知っておくべき『好奇心』の重要性と育て方

子どもの成長にとって「好奇心」は一番大切な能力を言っても過言ではありません。非認知能力の中でも好奇心は課題発見能力や勤勉性など様々な能力につながる「学びに向かう力」と言えます。

ある時期になると子どもは「これなに?」「これはなんで?」「どうして?」という”なんでなんでぜめ”を大人にしかけてきます。子どもの中に「もっと知りたい!」という好奇心の種が芽生えたからです。

「好奇心が学びに向かう力として大切なのはわかった!」 「でも,子どもの好奇心を育んでさらに伸ばすためには具体的にどうしたらいいの?」 「子どもの好奇心旺盛な時期に親はどう関わっていったらいいの?」

この記事では,「好奇心とは」「なぜ好奇心が大切なのか」「好奇心を伸ばすための関わり方のコツ」を中心にまとめていきます。

好奇心を伸ばして,自分から問題を考えて立ち向かっていく子に育てたい!という人はぜひご覧ください。

好奇心とは|「知覚的好奇心」と「科学的好奇心」

「好奇心」とは,興味を持った対象に対して「もっと知りたい!」と思う感情や動機のことです。

アメリカ心理学の祖ジェームズは,人間の好奇心には2種類あると唱えています。新奇な対象に対しての接近をもたらす「知覚的な好奇心」と,すでに持っている知識と情報とのズレによって喚起される「科学的な好奇心」です。
(参考:西川一二 (2021). 好奇心-新たな知識や経験を探究する原動力 小塩真司(編著) 非認知能力-概念・測定と教育の可能性 北大路書房 pp.64より)

この2つに見られるように好奇心は画一的な概念ではなく,いくつかの種類や性質を併せ持っています。これはその後の好奇心の研究に影響を与えました。
スピルバーガー(1994)は好奇心タイプを2つに分析しています。

拡散的好奇心:刺激が弱い時に生じる好奇心で,新奇性が低い環境によって生じる退屈さを解消しようとするもの。
特殊的好奇心:刺激が強い場合に生じる好奇心。複雑性が強い環境で起こり,特定の情報を求める特徴がある。

科学的な好奇心や特殊的好奇心は,一般的に知的好奇心とも言われます。勉強や問題解決に向かう力として取り上げられる際の好奇心は知的好奇心が中心になります。

人は生まれながらに,新しいものを吸収しようとする動機としての「好奇心」を備えているのです。

好奇心の源,子どもの敏感期

子どもはいろいろなものに興味を持って関わります。でも,よく見てみると興味を持つものの対象は年齢とともに少しずつ変化していきます。

非認知能力を伸ばす教育としても注目されているモンテッソーリ教育では,子どもの敏感期を大切にします。

敏感期とは,特定の分野に対して吸収力の高まっている時期のことです。例えば,0〜6歳は運動と感覚の敏感期です。この時期では,子どもたちは自分の体を思い通りに動かしていきながら,五感をフルに使って世界と関わっていきます。最初は寝返りしか打てなかった赤ちゃんが次第に座って,歩いて,走ってと徐々に自分の運動能力を伸ばしていきます。感覚でも触覚,視覚,聴覚,味覚,嗅覚を使って自分の世界を押し広げます。

敏感期は特にその刺激に対しての好奇心が発達している時期とも言えます。運動することや感覚に対してとても興味を持って関わっていくのです。

敏感期を見つけるコツについて「6歳までに一生を支える力を育む モンテッソーリ子育て 15か条」を参考に見ていきましょう。

  1. 何度も繰り返し自分からやっていることを見つける
  2. 子どもが注目しているものに注目する:何を見て何を聞いているのか
  3. 繰り返す「いたずら」に注目する

参考:松浦公紀「6歳までに一生を支える力を育む モンテッソーリ子育て 15か条」 pp.66

子どもの好奇心を見極めるには子どもの敏感期に注目することがポイントです。

好奇心を高めることがなぜ子どもの成長につながるのか

モンテッソーリ教育の中心理念は,子どもは「自己教育力」を持ち,子どもの成長には自然と芽が出る種子のように,自然のプログラムがあるということです。

敏感期は子どもが自ら自分の成長にとって必要なものを好奇心を持って取り込んでいく時期です。自然のプログラムに従い,子どもの自然な発達に歩調を合わせていくことがモンテッソーリ教育のかなめです。

子どもの好奇心に照準を合わせると,自然と成長する自己教育力がもっとも発揮されます。子どもの好奇心が一番発揮されるのが「遊び」の場面です。

子どもたちが自由に遊べる場「プレーパークせたがや」の理事をつとめる天野秀昭さんは,「遊び行為には自分で自分を育てる力が満ちあふれている」と話しています。
(参考:天野秀昭「よみがえる子どもの輝く笑顔 ~遊びには自分を育て、癒やす力がある~ (あんしん子育てすこやか保育ライブラリーspecial)」 pp.52

遊びの持つ力について詳しくは,「子どもの成長を支える「遊び」の意味と力」もご覧ください。

子どもの成長を支える「遊び」の意味と力子どもの成長,特に非認知能力を伸ばすために重要な「遊び」のもつ意味とちからについて心理士が丁寧に解説。そもそも遊びって何?どんな遊びが子どもを成長させるの?遊びをするより早期教育をしたほうがいい?など遊びに関する疑問にお答えします。...

子どもは自分の好奇心にしたがって思いっきり遊ぶことで,自分自身を成長させていくのです。

子どもの好奇心を高める方法

子どもの好奇心を高める方法として最もおすすめなのは,「遊び」を思いっきりやることです。前出の天野秀昭さんも「遊び込む」ことこそ子どもの成長に必要だと指摘しています。
天野秀昭「よみがえる子どもの輝く笑顔 ~遊びには自分を育て、癒やす力がある~ (あんしん子育てすこやか保育ライブラリーspecial)」

では,思いっきり「遊び込む」ためにはどうしたら良いのでしょうか。

「おもちゃの選び方与え方(エイデル研究所)」で新開英二 さんは,子どもの遊びの展開を螺旋状に繰り返されていくPDSサイクルと紹介しています。PDSサイクルとは,PLAN(計画),DO(実行),SEE(確かめる)を繰り返し行うことです。

PLAN:計画
DO:実行
SEE:確かめる

具体的な例を「おもちゃの選び方与え方」から見てみましょう。

例えば、だんご作りを例にみてみよう。お兄ちゃんやお姉ちゃんの作っているだんご作りを見たり教えてもらい、自分でも作ってみようと思う(P1)→次に自分で作ってみる(D1)→そして、自分の技量・力量にてらしてうまくできたかどうかを確かめる (S1)これを一サイクルとして、次の段階には、もっと上手にできるにはどうすればいいか、失敗しないためにはどうすればいいかを考える (P2)→やってみる(D2)→そしてうまくいったかどうかを確かめる(S2)。このサイクルをネジ山がつづくように発展進歩を重ね、生きるべき術としての、知恵・手ごころ・手加減・技術を獲得していくのである。
げ・ん・き編集部(編) おもちゃの選び方与え方. エイデル研究所 pp.83

敏感期に子どもは自分の成長に必要な行為を繰り返し行います。楽しい遊びの中ではそれが顕著に行われます。

PDSサイクルが回せるように,子どもに与えるおもちゃはシンプルで「試行錯誤のできる」ものがおすすめです。

さらに,できるだけ「本物」を与えてあげると子どもの好奇心はもっと高まっていきます。本物の感覚に触れる体験が子どもの好奇心を引き伸ばすのです。(参考:トレーシー・カチロー(著), 鹿田昌美(訳) 「いまの科学で「絶対にいい! 」と断言できる 最高の子育てベスト55―IQが上がり、心と体が強くなるすごい方法」

遊びのPDSサイクルが子どもの好奇心を満たして,主体性を育てる。結果として,子どもの想像力/創造力や思考力・やる気といった能力を向上させ学びに向かう力になっていくのです。

好奇心を高めるための親子の関わり方のコツとポイント

子どもの好奇心を高めるためには,環境づくりや遊び・おもちゃ選びと同じくらい親子の関わり方が重要です。

親子の関わり方のコツとポイントは,

  • 不安感を取り除く
  • 共感的な態度でやり取りする
  • 言葉をたくさん交わす
  • 何をするかタイミングは子どもに任せる
  • 子どもの自発的な行動にご褒美はNG

親子の関わり方のコツとポイントをそれぞれ見ていきましょう。

不安感を取り除く

子どもの好奇心を高めるためには,子どもの「不安感を取り除く」ことがもっとも大切です。

イノベーター教育の権威であるハーバード大学のトニー・ワグナー博士は,「子どものイノベーティブな能力を伸ばすためには,スケジュールを詰め込まず,遊びと発見の時間を確保する」ことが重要だと指摘しました。

発見には挑戦や探索が必要です。挑戦や探索には不安がつきものです。大人でも新しいことに挑戦するときは不安になりますよね。

子どもは親に見守られることでこの探索に必要なエネルギーを補給します。子どもは親密な愛着関係をベースに親を”安全の基地”として使い,探索の不安感を軽減していくのです。特に「拡散的好奇心」に対する探索は不安に対して好奇心がより優位に立っている場合に生じる,とスピルバーガー(1994)は指摘しています。

新しいものに対して探索していくには不安感を取り除くことが重要です。

共感的な態度でやり取りをする

子どもの興味や関心に親が共感的な態度で接することもポイントです。共感的な態度で接することは親密な愛着関係を築くためにも必要です。

将棋の藤井聡太棋士はモンテッソーリ教育を受けた成功者の中でも有名な一人です。

藤井聡太棋士のお母さんは,幼児期から何かに夢中になるとすごい集中力を発揮する藤井棋士に対して,「集中している時は邪魔しない」ということをお父さんと一緒に約束したと話しています。藤井棋士はほとんどの時間をリビングで将棋に向かって過ごしていたそうです。(参照:堀田はるな(著) 堀田和子(監修)「子どもの才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド」)

子どもの好きなことや夢中になっていることに,共感しながら見守ることで好奇心を伸ばすことができます。子どもの好きを発見する,そしてその好きに向かえる環境を用意してあげましょう。

非認知能力を伸ばすための環境づくりについて詳しくは,「【非認知能力を伸ばす】子どもが育つ家庭環境づくりの考え方」もご覧ください。

【非認知能力を伸ばす】子どもが育つ家庭環境づくりの考え方非認知能力を伸ばすための家庭環境づくりのポイントを心理士が丁寧に解説。「挑戦できる環境」「好奇心を発揮できる環境」「達成感を感じられる環境」「安心・安全な環境」「ルールのある環境」の5つのポイントをわかりやすく紹介しています。...

言葉をたくさん交わす

学ぶ力の基礎になるのは言語能力です。

私たちは言葉でものを考えます。したがって,思考をはじめとする認知能力の基盤となるのは言語能力です。
榎本博明「子どもが伸びる 親のことば: 《非認知能力》と《認知能力》を高める秘訣」 pp.174

言語能力は文章を理解したり,自分の思いを相手に伝えるためだけでなく,想像力や発想力の元にもなります。

言葉の発達には語彙を増やすことが大切です。子どもの言語能力を伸ばすためには,幼児期から感情を交えた親子の言葉のやり取りを行い子どもの語彙を増やしてあげましょう。まだ言葉の出ない乳幼児のうちから,子どもの感情に共感的に寄り添い,子どもの言いたいことを「まんま食べたいねー」「鳥さんが飛んでるね」「あったかくて気持ちいいね」など表現してあげると子どもは自然と言葉に興味を持つことができます。

子どもは大人の話していることを真似したがるものです。親が語彙豊富に感情を表現したり,情景を描写したりする言葉を聞いていると子どもの言葉の世界はどんどん広がっていきます。

おすすめなのは一緒に絵本を読みながら,感情を交えて感想を言ったり子どもの反応に合わせて言葉をかけてあげることです。もちろん,遊びや日常の中で言葉をかけることも子どもの言語能力を伸ばすためには効果的です。

子どもの好奇心が伸びてきている「なぜなぜ期」には,子どもの「なぜ?」にあえて直接答えないことで子どもの言語能力や思考力が伸びるチャンスにもなります。

非認知能力教育を紹介しているボーク重子さんは,「子どもの「なぜ?」は子どもの考える力を伸ばすチャンス。直接的な答えをすぐに与えるのではなく,「どうしてだと思う?」と考えることを促してみる」方法をおすすめしています。
(参考:ボーク重子「『非認知能力』の育て方-心の強い幸せな子になる0〜10歳の家庭教育」pp.76

何をするかタイミングは子どもに任せる

子どもの興味関心に任せて,何をするのかは子どもが自分のタイミングで決めることが良いでしょう。

子どもは「今,自分が何をすべきか」ということを本能的に知っています。そして必ず子どもの方から、「今、すべきこと」に関わろうとします。その時こそ、学びの適期だと言うことを、保護者は知っておく必要があるのです。
松浦公紀「6歳までに一生を支える力を育む モンテッソーリ子育て 15か条」 pp.113

子どもは自然のプログラムに従って,自分の発達成長に合わせて必要な学びをしていきます。その際,親の関わりとして必要なことは手出しをするのではなく手本を見せることと,興味関心を適切な方向に広げてあげること,そして一番大切なのは子どもの意欲を引き出してあげることです。

子どもの意欲の引き出し方については,「【非認知能力を伸ばす】子どもが育つ環境づくりの考え方」でも解説しています。

【非認知能力を伸ばす】子どもが育つ家庭環境づくりの考え方非認知能力を伸ばすための家庭環境づくりのポイントを心理士が丁寧に解説。「挑戦できる環境」「好奇心を発揮できる環境」「達成感を感じられる環境」「安心・安全な環境」「ルールのある環境」の5つのポイントをわかりやすく紹介しています。...

子どもの自発的な行動にご褒美はNG

子どもががんばっていたり,お手伝いをしたりしていたら親もうれしくなってついついご褒美をあげたくなってしまうかもしれません。ただし,子どもが自分からすすんで行った行動にはご褒美をあげない方が良いでしょう。

スタンフォード大学の心理学者,マーク・レッパーは幼稚園児のグループに対して実験を行いました。「絵を描いたらご褒美に青いリボンと賞状をあげる」と子どもたちに告げ,2週間後の様子を観察するというものです。その結果,園児たちは実験前より明らかに絵を描くことへの興味を失っており,自由時間に絵を描くこともご褒美を設定する前よりも減少していました。

子どもは本来好奇心旺盛でその行為自体を楽しんで行っていますが,ご褒美をもらうことで自ら行なっていた行動でも,行為自体への興味を失ってしまうことがあります。ご褒美をもらうことが目的化してしまうのです。

発達心理学者の森口祐介さんは子どもの自主性について「見守る関わりが大事」だと言っています。

子どもは自分のために自分を制御するのであり、人に褒められるために頑張るのではありません。子どもが自主的にやっていることに対しては,見守るような関わり方をすることが重要になってきます。
森口祐介「自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学 (講談社現代新書)」 pp.155

子どものがんばりにはご褒美という物ではなく,がんばりを認めてあげたり,共感的に受け止めてあげるといいでしょう。

まとめ|好奇心を伸ばすには「遊び」と「親の関わり」が大切

子どもの好奇心を伸ばすには,「敏感期」に注目して環境を整えること,遊びを通して子どもが興味関心のあるものにとことん集中できることが大切でした。

親の関わりは環境づくりの基礎になり,遊びを通した成長を加速させます。

親の関わり方として重要なポイントは次のとおりです。

  • 不安感を取り除く
  • 共感的な態度でやり取りする
  • 言葉をたくさん交わす
  • 何をするかタイミングは子どもに任せる
  • 子どもの自発的な行動にご褒美はNG

好奇心は子どもの成長の基礎となる力です。子どもの好きなものを一緒に探しながら,夢中になれる時間を親子で共有していきましょう。

参考文献・サイト

天野秀昭. (2011). よみがえる子どもの輝く笑顔: 遊びには自分を育て、癒やす力がある. すばる舎.
榎本博明 2022. 子どもが伸びる親のことば 《非認知能力》と《認知能力》を高める秘訣. 河出書房新社
堀田はるな(著) 堀田和子(監修) 2018. 子どもの才能を伸ばす最高の方法モンテッソーリ・メソッド. あさ出版
数井みゆき・遠藤利彦(編著) 2005. アタッチメント 生涯にわたる絆. ミネルヴァ書房
Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the” overjustification” hypothesis. Journal of Personality and social Psychology, 28(1), 129.
松浦公紀 2022. 6歳までに一生を支える力を育むモンテッソーリ子育て15か条. 幻冬舎
森口祐介 2019. 自分をコントロールする力 非認知能力スキルの心理学. 講談社現代新書
西川一二 (2021). 好奇心-新たな知識や経験を探究する原動力 小塩真司(編著) 非認知能力-概念・測定と教育の可能性. 北大路書房
Spielberger, C. D., & Starr, L. M. (2012). Curiosity and exploratory behavior. Motivation: Theory and research (pp. 231–254). Routledge.
田中昌子(著),空生直(絵).2018 マンガでやさしくわかるモンテッソーリ教育 日本能率協会マネジメントセンター
トレーシー・カチロー(著), 鹿田昌美(訳) 2016. いまの科学で「絶対にいい! 」と断言できる 最高の子育てベスト55―IQが上がり、心と体が強くなるすごい方法. ダイヤモンド社
トニー・ワグナー(著) 藤原朝子(訳). 2014. 未来のイノベーターはどう育つのか-子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの 英治出版
新開英二 (1993). 子どもの遊びとおもちゃ げ・ん・き編集部(編) おもちゃの選び方与え方, pp.77-91. エイデル研究所

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公認心理師/臨床発達心理士/保育士 大学・大学院で心理学を専攻。発達支援歴8年200人以上の保護者と子どもたちを支援。"こころの育ちの専門家"。 モットーは「豊かに生きる力を伸ばしてもっと笑顔に!」非認知能力を伸ばす子育てについてわかりやすく発信中。