目まぐるしく社会が変わっていく昨今,AIの台頭に表されるように変化のペースや激しさはますます加速しています。人間がなすべき仕事も変わっていく時代です。
様々なものが変化していく中で,学力といった従来求められていた能力も例外ではありません。
そんな「答えのない時代」だからこそ,子育てで大切にすることに悩む方も多いのではないでしょうか。
変化の激しい時代を生き抜くキーワードが「非認知能力」です。子どもの非認知能力を鍛えるために最適なのが「遊ぶこと」。そして,子どもが遊びによって成長するためには「敏感期に合わせた環境」こそが大切です。
この記事では,0〜6歳までのお子さんを子育て中のママ・パパに向けて「非認知能力・敏感期とは」「敏感期に合わせた非認知能力を鍛える遊び」「遊ばせ方のコツ」を詳しく解説していきます。
子どもの才能は伸ばしたい!でも,詰め込み教育とかではなく生き生きと成長してほしい!
そんな子育て中の方はぜひ参考にしてください。
Contents
非認知能力とは
非認知能力とは,コミュニケーション能力,やり抜く力や”生きる力”などに代表されるような数値化が難しい,けれど人生を豊かに生きるために必要とされる力のことです。
従来の教育で重視されてきたのは,学力やIQといった数値化しやすい能力(=認知能力)でした。
認知能力がある特定の場面で発揮される”課題処理能力”であるのに対して,非認知能力は複雑な場面や曖昧な場面で発揮される”問題解決能力”のようなものです。
15種類の非認知能力の例
非認知能力は研究者によってさまざまな種類の能力があげられています。代表的なものを表にまとめました。
- 誠実性:課題にしっかりと取り組むパーソナリティ
- グリット:困難な目標への情熱と粘り強さ
- 自己制御・自己コントロール:目標の達成に向けて自分を律する力
- 好奇心:新たな知識や経験を探究する原動力
- 批判的思考:情報を適切に読み解き活用する思考力
- 楽観性:将来をポジティブに見て柔軟に対処する能力
- 時間的展望:過去・現在・未来を関連づけて捉えるスキル
- 情動知能:情動を賢く活用する力
- 感情調整:感情にうまく対処する能力
- 共感性:他者の気持ちを共有し,理解する心理特性
- 自尊感情:自分自身を価値ある存在だと思う心
- セルフ・コンパッション:自分自身を受け入れて優しい気持ちを向ける力
- マインドフルネス:「今ここ」に注意を向けて受け入れる力
- レジリエンス:逆境をしなやかに生き延びる力
- エゴ・レジリエンス:日常生活のストレスに柔軟に対応する力
(参考:小塩真司 (2021). 非認知能力-概念・測定と教育の可能性. 北大路書房より作成)
子どものうちには特に「自己制御・自己コントロール」「好奇心」「感情調整」「共感性」「自尊感情」などの能力を伸ばしていきたいところです。
遊びで鍛えられる非認知能力
「子どもの仕事は遊び」というくらい,子どもは一日中遊んでいます。生活の中で触れ合うもの日常の全てを子どもは遊びへと発展させる力を持っています。それは,子どもにとって自分を成長させるために「遊びが必要」だからです。子どもは自分に必要なものを知っているのです。
遊びは子どもの能力を全体的に伸ばすことができます。一方でいわゆる英才教育や早期教育と呼ばれるような早くから行われる英会話やスポーツ,学習教室などは限られたある特定の分野しか能力を伸ばすことができません(反対に言えば特定の分野に特化させて能力伸ばしたい場合は幼児教育も有効です!)。
幼児期のバランスの取れた発達はその後の成長の安定感を生み出します。子ども時代には遊びによる成長機会を大切にしていきたいところです。
遊びの持つ力については,「子どもの成長を支える「遊び」の意味と力」でも詳しく解説しています。
非認知能力が注目される理由
非認知能力は2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授が提唱したことで注目を集めました。(参考:ジェームズ・ヘックマン「幼児教育の経済学」)
非認知能力の高さは,学歴・生涯年収の多さ・持ち家率の高さ・逮捕者率の低さなど,様々な面で影響を与えることがわかってきました。
OECDよっても「社会的情動スキル」=”学びに向かう力”として調査され,学力との関連も報告されています。(参考:経済協力開発機構(OECD)「 社会情動的スキル-学びに向かう力」)
日本においても,経済産業省が掲げる「社会人基礎力」の中で非認知能力が重視されています。
ChatGPTに代表されるような,AIによる社会環境の変化がもたらされている昨今では”人間ならではの力”として非認知能力の重要性が増してきています。
非認知能力が高い子どもが持つ力
非認知能力が高い子どもは,自分の課題を自分で見つけて解決していったり,自分の感情・興味関心に敏感だったり,自立していることが特徴です。自分で決めたことをやり抜く力(グリット)も持っています。
発達心理学者の森口佑介氏は,「子どもの発達格差 将来を左右する要因は何か (PHP新書)」にて「実行機能」という非認知能力の高さは,子どもの未来に向かう力に影響するといっています。実行機能の高い子どもは,子どもの目標に向かって行動する力に強く影響し,未来の目標のために”いまがまんする”力として発揮されます。
「非認知能力が高い子どもの特徴」については別の記事でも詳しく解説しています。
遊びを選ぶために理解したい「敏感期」
子どもが成長するために必要な遊びを選ぶためには,子どもの「敏感期」を理解することが重要です。
敏感期とは,特定の分野に対しての吸収力が高くなっている時期のことを指します。
将棋の藤井聡太棋士が子どもの頃に受けた教育としても注目されているモンテッソーリ教育では,この敏感期をとても大切にします。
敏感期を過ぎると特定の分野の吸収力がおさまり,その分野の習得にたくさんの時間がかかるようになってしまうからです。
0〜6歳の間は特に吸収力が高まっている時期です。6歳までの敏感期は下記の表を見てください。
子どもの「敏感期」 | 時期 | |
---|---|---|
感覚の敏感期 | 0〜6歳 | 五感を働かせる時期。見る,聞く,触れる,かぐ,味わうが研ぎ澄まされる。その情報を整理,分類する。 |
運動の敏感期 | 0〜6歳 | 自分の体が思い通りに動かせることが嬉しい。立つ,座る,運ぶなどの基本的な動作を身に付ける。手指の細かい運動もできるようになる。 |
言語の敏感期 | 胎児期の7ヶ月半〜5歳半 | 胎児の時から音や声を聞き始め,母語を習得する。人の話を熱心に聞き,自分でも話し始める。文字を読むことや,書くことを始める。 |
秩序の敏感期 | 6ヶ月〜6歳 | 物事の順番や置き場所へのこだわりが出てくる。「同じことを同じ順序」でやりたがったりものをまっすぐに並べ続けたりする。 |
数の敏感期 | 4歳〜 | なんでも数えたくなり,声に出して数えだす。数字に気がつき,数の概念がわかるようになってくる。年齢や日付,量にも関心が向く。 |
文化の敏感期 | 4歳〜 | 周囲の世界に関心が生まれる。植物,動物,鉱物,宇宙,歴史,地理などに興味を示す。 |
(参考:松浦公紀「6歳までに一生を支える力を育む モンテッソーリ子育て 15か条」より作成)
敏感期を見つけるコツは次の3つ
- 何度も繰り返し自分からやっていることを見つける
- 子どもが注目しているものに注目する:何を見て何を聞いているのか
- 繰り返す「いたずら」に注目する
(参考:松浦公紀「6歳までに一生を支える力を育む モンテッソーリ子育て 15か条」 pp.66)
敏感期に合わせて遊びの環境を用意することで,子どもは自分に必要な経験を積み重ね自然と成長することができます。つまり,敏感期に合わせた遊びを一緒にすることで,子どもは自分に必要な能力を伸ばすことができるのです。
遊びをしやすい環境のコツについては,「【非認知能力を伸ばす】子どもが育つ環境づくりの考え方」も参考にしてみてください。
非認知能力を鍛える遊び
敏感期を参考に非認知能力を鍛える遊びをご紹介します。
子どもの「敏感期」 | 時期 | おすすめの遊び |
---|---|---|
感覚の敏感期 | 0〜6歳 | ・水遊び ・泥遊び ・草遊び ・音-リズム遊び |
運動の敏感期 | 0〜6歳 | ・鬼ごっこ ・遊具遊び ・工作/料理 |
言語の敏感期 | 胎児期の7ヶ月半〜5歳半 | ・読み聞かせ ・言葉クイズ |
秩序の敏感期 | 6ヶ月〜6歳 | ・積み木ブロック遊び |
数の敏感期 | 4歳〜 | ・積み木ブロック遊び |
文化の敏感期 | 4歳〜 | ・ごっこ遊び |
感覚の敏感期の遊び|水遊び・泥遊び・音-リズム遊び
感覚の敏感期には五感にうったえかけるような遊びがおすすめです。とくに,この時期には触れること,においを嗅ぐこと,音を聴くことを積極的に取り入れていくと,子どもの感情を伸ばす助けになります。
おすすめの遊びは
- 水遊び
- 泥遊び
- 草遊び
- 音-リズム遊び
水遊び・泥遊び
子どもは水遊びが好きです。水の手に触れた感覚やキラキラ光を反射する見た目,入れ物に入れた時の形状の変化など子どもの感覚をたくさん刺激してくれます。
水遊びから泥遊びに発展していくのもいいでしょう。土の状態から水を加えることで手触りが変わる泥。子どもの頃泥だんご作りに夢中になった人も多いのではないでしょうか。
泥の手触りといった感覚だけでなく,「何か別のものを加えることで形質が変化する」という体験はその後の理科・科学教育へつながるきっかけにもなっていきます。
草遊び
シロツメクサをつなげて「草かんむり」をつくったり,オオバコのくきをひっぱりあって「草すもう」をしたり,公園や外にでれば子どもの興味をひく”遊び道具”はいっぱいです。
植物に触れるという体験も子どもの情緒的な発達に良い影響を与えますが,本物の草に触れた時のにおいを感じることで嗅覚が刺激され発達していきます。草遊びは他のものでは代用できない”本物の体験”なので,ぜひ積極的にお子さんと楽しんでみてください。
音-リズム遊び
子どもは音楽が好きです。保育園や幼稚園で習った歌やEテレで流れた曲などすぐ覚えてしまう子も多いでしょう。音への感覚が敏感になっているこの時期には,ぜひ「音で遊ぶ」体験も取り入れてみましょう。
音で遊ぶといっても身構えなくても大丈夫。太鼓や木琴,シェイカー(マラカスのようなもの)など簡単に音を出せるものを用意することで,手先がまだ器用ではない子どもでも音を奏でることを楽しめます。子どものお気に入りの曲や何かの曲,リズムに合わせてお家の中で身体を動かすのもいいですね。
子ども向けのリトミック(音楽に合わせて体を動かしたり,楽器を演奏したりする)教室も増えてきています。
ただし,「音の出るおもちゃ」には少し注意が必要です。「音の出るおもちゃ」は確かに音の刺激ではあるのですが,たいていの場合ボタンを押すと決まったパターンで音が流れるといったタイプのものが多いです。これでは音やリズムと積極的に関わることができません。
音やリズムに対する感覚を養うには,自分から能動的に楽器に関わって音を生み出す体験が重要です。
非認知能力を鍛えるための音-リズム遊びでは,「音の出るおもちゃ」だけを与えておしまいにしないことです。
運動の敏感期の遊び|全身運動と指先運動
運動の敏感期は,自分で自分の体をコントロールできるようになることが嬉しい時期です。
歩くこと走ることや,ジャンプすること,バランスをとることなど,大きく体を動かすものから,指先を使った細かな動きまで遊びを展開していきましょう。
おすすめの遊びは
- 鬼ごっこ
- 遊具遊び
- ストップ&ゴー
- プットインおもちゃ,ハンマー系おもちゃ
- 工作/料理
全身運動(粗大運動)|鬼ごっこ・遊具遊び
子どもの成長は「中心から細部」へと進んでいきます。まずは全身を大きく使って遊ぶことで子どもの身体の発育を刺激することができます。
保育園・幼稚園も年中くらいになると簡単なルールを理解できるようになります。鬼ごっこはタッチされたら鬼が入れ替わるという単純なルールなので比較的幼いうちから楽しむことができます。鬼ごっこの「役割の入れ替わり」がまだ理解できないうちは,追いかけられる,つかまる,また逃げる,といった単純な”追いかけっこ”だけでもOK。子どもにとっては自分の持てる力をフルに使った活動なので全力で楽しむことができます。
公園の遊具で遊ぶことも子どもの身体全身を使った遊びになります。ブランコでバランスを取ったり,ジャングルジムを登ったりするのは「走る」だけでは刺激されない運動感覚を刺激できるのでおすすめです。
家の中など省スペースでも子ども用トランポリンなどを使うと限られた空間でも全身を使った遊びができます。
しかし,なかなか全身を使う激しい遊びは家の中では難しいかもしれません。
そんな時は,ストップ&ゴー(音や合図に合わせて歩いたり止まったり,決まったポーズを取ったりする遊び)など大きな動きを伴った全身のコントロールをするような遊びがおすすめです。
指先運動(微細運動)|おもちゃ遊び・工作・料理
指先の細かな運動(微細運動)も子どもの運動の敏感期には好まれる遊びです。この時期にはプットイン系のおもちゃ(穴から中にものを落とす)や工具系おもちゃは楽しみながら指先の発達を促すことができます。
ハンマー系おもちゃでは手と目を連動させた「協応動作」の能力を養うことができます。「協応動作」は見た物に対して体の動きを連動させる動作なので,球技などその後のスポーツを楽しむ力につながっていきます。
子どもの指先の発達,器用さに合わせておもちゃや道具を選んでいきましょう。
子どもと一緒に工作や料理をすることも指先運動を鍛えることができます。餃子やハンバーグなど子どもが好きなものを一緒に作って食べる,興味のあるものを折り紙や紙パックで工作するなど体験を共有することは遊びとして楽しいだけなく,親と子の感情を交えた情緒的交流ができます。情緒的な交流は非認知能力の基盤となる愛着(アタッチメント)の発達のためにも大切な体験です。
言語の敏感期の遊び|読み聞かせ・言葉クイズ
言語の敏感期には,話し言葉への興味が豊かになっています。幼児期に話しかけられた語彙数がその後の国語力を伸ばす効果もあると言われています(BSN新潟放送|本の読み聞かせが親子に与える効果とは)。
0〜6歳の時期には積極的に言葉に触れる機会をつくっていきましょう。
おすすめの遊びは
- 読み聞かせ
- 言葉クイズ
読み聞かせ
絵本の読み聞かせは,子どもの言語への敏感な興味に良い刺激を与えます。語彙力が増えるだけではなく,想像力やコミュニケーション能力,集中力の向上も期待ができます。
読み聞かせは,「親の声」で聴けるということも大切です。子どもにとって親の声は安心できるもの。安心できる環境があることは子どもの感情の安定にもつながります。
言語の発達だけではなく情緒的な交流ができる点も読み聞かせの利点です。
絵本を選ぶときは,子どもの年齢や言語の発達状況に合わせて適したものを選びましょう。絵本には「名作」と呼ばれるような世代を超えて愛されている作品が数多くあります。やはり,世代を超えて売れ続けているからには絵の表現の豊かさや言葉の面白さなど,絵本としての質の良さが表れています。何を買うか迷った時は,ぜひ「名作」を手に取ってみてください。
言葉クイズ
ある程度の語彙が増えてきたら,クイズやなぞなぞで言葉を楽しむこともおすすめです。「私は誰でしょうクイズ」(私は〇〇です,という幾つかのヒントをもとに答えを見つけるクイズ)は者の名前を覚えた時期から楽しめるクイズでおすすめです。
5歳くらいになると抽象的な思考力が少しずつ育ってきます。抽象的な思考が育ってくると少しずつなぞなぞも楽しむことができるようになってきます。なぞなぞのような「少しひねった」言葉の表現に触れることで,子どもの言語に対する興味関心はもっと深くなっていきます。
子どもにクイズを考えてもらうのも言葉を超えた思考力を養ういい機会になります。言葉の面白さと考える楽しさを感じられるように遊んでいきましょう。
数・秩序の敏感期の遊び|ブロック・積み木
数や秩序の敏感期では,ものの数を数えたり,ものを並べたり,分類したりすることが楽しくなってきます。
おすすめの遊びは
- ブロック遊び
- 積み木遊び
ブロックや積み木は想像力/創造力を豊かにするおもちゃの代表です。もちろんブロックや積み木を使って何かをつくるのは子どもの想像力を大いに豊かにしてくれるベストアイテムです。しかし,ここでは何かを作るだけではないブロックや積み木の遊び方をご紹介します。
ブロック遊び・積み木遊び
数・秩序の敏感期のブロックや積み木の遊び方は,「並べること」「分類すること」「数えること」が中心です。この時期に興味があるのは,ブロック/積み木を使って何かを作ることではなく,”数えること””並べること”自体なのです。
例えば,ブロックを同じ形のものだけで揃えるや色分けをする,積み木を3個ずつのかたまりに分けるなど。
ただ並べているだけ,分類わけしているだけであっても,「今の時期に必要な遊び方」を子どもが選んでいるのです。「ブロックは組み立てて遊ぶもの!」と決めつけずに,子どもの豊かな遊び方を見守っていきましょう。集中して遊びこむことができれば,自然と子どもは次の段階へとステップアップしていきます。
文化の敏感期の遊び|ごっこ遊び
子どもは自分が生活する世界そのものにも興味を抱いていきます。文化の敏感期には,社会そのものや地理的なもの,科学的なものにも興味が広がります。
おすすめの遊びは
- ごっこ遊び
文化の敏感期におすすめの遊びは「ごっこ遊び」です。
ごっこ遊び
子どもは大人の真似をしたがります。お母さんの口ぐせや店員さんのレジでの挨拶などを覚えます。大人の振る舞いを真似して再現することで,社会を理解し,自分の中の世界を広げていくのです。
ごっこ遊びは子どもが好んでする遊びですが,発達的な意味も大きいものです。ごっこ遊びの中でお母さんの再現をすることで「お母さんとはこういう役割をする人」「先生とはこういう役割の人」と理解していきます。
自分の生活圏から離れて異なる文化の世界,異なる年代を旅することができるのもごっこ遊びの醍醐味です。ごっこ遊びで世界を展開することは子どもだけでは少し難しいので,大人が混ざりながら積極的に展開をしていくといいでしょう。
おままごとで使うものは子どもが扱えるならば,できるだけ本物の道具を用意できるといいでしょう(もちろん包丁など危険なものは避けて)。
学童期以降の遊びのポイント
6歳を越えた年齢になると思考力やルールの理解力が格段に成長していきます。学童期以降におすすめの遊びは「ルールのある遊び」や「競技性のある遊び」です。代表的なものはボードゲームです。
学級運営にボードゲームを活用している小学校教員の加賀俊介さんは次のように話しています。
ボードゲームは子どもが主体的に学べ,周りと関係をつくれ,それらを実生活に結びつける力があります。 加賀俊介「ボードゲーム教育」pp.21
ライフコーチのボーク重子さんも「「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育」の中で「ボードゲームで遊ぶことで問題解決力を培うことができる」と話しています。
ボードゲームには運と実力が作用するゲームも多く,大人が相手になっても負けることがあるので子どもも対等に勝負をすることができます。
ルールの枠の中で競い合うことは,問題解決力を伸ばす絶好の機会となります。
非認知能力を鍛える関わりのコツ
非認知能力を鍛える遊びに大人が関わる時は,次の5つの点に気をつけましょう。
- 子どもの主体
- 好奇心を尊重する
- 言葉かけの仕方を工夫する
- やらせたい遊びはさりげなく提示する
- 親の関わり方は教え込むことじゃなくて環境を用意して,やり方を示すこと
遊びは非認知能力を鍛えるためにとても効果的です。だからといって大人が無理やり特定の遊びを強制してしまっては,子どもにとってその活動はもはや「遊び」とはいえなくなってしまいます。
大人の役割は「環境を用意して」「やり方を示すこと」,そして子どもが主体となった時の遊び相手になってあげることでしょう。子どもの好奇心を大切にして,子どもが楽しめるように言葉かけを考える,その中でさりげなくやらせたい遊びを提示してあげると良いでしょう。
親の関わり方について詳しくは,「【非認知能力を伸ばす】子育てに重要な親の関わり方5つのポイント」もご覧ください。
遊びに関するQ&A
Q.遊びへの誘導方法は?
子どもの好奇心を刺激することが大切です。強制しないことを念頭に置きつつ,その遊びのやり方や面白さを伝えていきましょう。また,人は多くの情報を持っていることで行動のハードルが下がります。その遊びにまつわる情報を子どもにさりげなく伝えていくことで子どもの興味を引くことができるかもしれません。
遊ばせたいおもちゃなどは子どもの生活環境にさりげなく置いておきましょう。
大人が楽しそうな表情,声色で誘うことで子どもの「やってみたい!」という気持ちを一番盛り上げることができます。
Q.遊びを嫌がった時は?
遊びを嫌がった時は,無理強いしないようにしましょう。
本来遊びは「自発的なもの」です(詳しくは「子どもの成長を支える「遊び」の意味と力」)。子どもの興味はその時の気分で移ろいやすいもの。また興味をもつタイミングが来てくれると信じて,いまはそっとしておきましょう。
ただし,子どもがその遊びに対して「わからない」ことが多くて不安を抱いている時には,丁寧にやり方を説明してあげることで,楽しんで遊ぶことができます。子どもの表情にも注目してみましょう。
Q.おもちゃの選び方は?
おもちゃは子どもが「遊び込めるもの」を用意してあげましょう。電動のもの音の出るものは刺激が強いぶん,”それ以外の遊び方”ができなくなってしまうので,非認知能力を鍛えるための遊びには不向きです。
子どもの興味に合わせつつ,できるだけ遊びを自由に展開できるシンプルなものを選んであげましょう。
おもちゃについては,「非認知能力の向上におもちゃが果たす役割とは」でも選び方について解説しています。
Q.ゲームはやらせてもいいの?
実はゲームも子どもの成長には良い影響があります。謎解きをしたり,計画的に進めたりと問題解決力の向上が期待できます。ゲームをすること自体は問題がありません。
ただし,遊びがゲームだけになってしまったり,日常生活に影響が出るほどやりすぎてしまうことは問題となります。
ゲームをするときは,時間やルールを決めて遊ばせることが大切です。
ルールについて詳しくは,「自主性をつぶさない親子のルール決めで非認知能力をのばす」。
まとめ|子どもの発達段階に合わせた遊びが最適な遊び
遊びによって非認知能力を鍛えるためには子どもの敏感期へ注目することが重要です。
子どもは自ら成長する力を持っています。その力が余すことなく発揮されるのが遊びです。子どもは自分に必要な力を遊びを通して習得していきます。大人の役割は子どもが自由におもちゃや遊びと関われるように環境を調整することです。
子どもの発達段階に合わせて,最適な環境を用意してあげましょう。
参考文献・サイト
ジェームズ・J・ヘックマン(著) 古草秀子(翻訳) 2015. 幼児教育の経済学. 東洋経済新報社
経済協力開発機構(OECD)(編著) 2018. 社会情動的スキル-学びに向かう力. 明石書店
森口佑介 2021. 子どもの発達格差-将来を左右する要因は何か. PHP新書
加賀俊介 2022. ボードゲーム教育. 青雲社
ボーク重子 2018. 「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育. 小学館
経済産業省|社会人基礎力
BSN新潟放送|本の読み聞かせが親子に与える効果とは