子どもには思う存分遊んでほしい!そう思っている親は多いでしょう。
でも!「遊びも大事だけど,小学校に上がって勉強に困らないような成長もして欲しい…!」と願うのも親心ではないでしょうか。
「どうせなら遊びながら成長してくれたらいいのに!」
「おもちゃで遊んでたら子どもの能力は伸びないの?」
「知育玩具って本当に子どもの成長にいいの?」
「知育玩具以外のおもちゃでは子どもは成長しないの?」
この記事ではそんな悩みに答えながら,子どもの成長,特に「非認知能力」の発達とおもちゃの関係について解説していきます。
子どもの成長にとっておもちゃが果たす役割は大きいです。「子どもの成長を促すおもちゃの特徴」「おもちゃ遊びで伸びる能力」「おもちゃの効果的な与え方」について詳しくお話ししていきますので,ぜひ参考にしてください!
Contents
子どもの成長におもちゃが欠かせない理由
子どもにとって遊びは生活の全てと言っても過言ではないでしょう。
遊びとは「子どもの年齢に応じて楽しむことができ,そのうえ面白さを追い求める活動」「自主的・自発的で自由な活動」だと,保育の専門家である勅使千鶴先生は話しています。
(参考:勅使千鶴「子どもの発達とあそびの指導」pp.29-32)
自分の興味や関心,好奇心にしたがって行う自由で楽しい活動こそ遊びの本質です。子どもは遊びの中で多くのことを学びながら,自分の心と身体を成長させていきます。
遊びの持つ力について詳しくは,「子どもの成長を支える「遊び」の意味と力」もご覧ください。
そんな子どもの遊びの中心となるのが「おもちゃ」です。
おもちゃは遊びをもっと広げたり,もっと楽しくしたり,子どもの良きパートナーとして発展させていきます。おもちゃは遊びの持つ力を増大させてくれるアイテムなのです。
子どもの発達をうながすおもちゃの特徴
発達をうながすためのおもちゃの条件は,「遊び込めること」です。
書籍「おもちゃの選び方与え方」にて新開英二さんは,子どもの遊びの展開を次の3つのステップで説明しています。
PLAN:計画
DO:実行
SEE:確かめる
(参考:新開英二 (1993). 子どもの遊びとおもちゃ げ・ん・き編集部(編) おもちゃの選び方与え方, pp.77-91. エイデル研究所)
子どもの遊びを観ていると同じ行動をしていることがあります。大人の側から見るとなんの変哲もないこの循環ですが,子どもの内面ではこの「計画すること」「実行して見ること」「確かめること」のPDSサイクルが繰り返されています。子どもはこの活動の繰り返しによって遊びと学びをつなげているのです。
また,新開英二さんは同書で「このサイクルのない遊びは単なるじゃれ合いになってしまい子どもは満足感を感じない。子どもの成長発達を促す遊びにはならない。」とも指摘しています。
子どもの成長発達のためには,PDSサイクルを回して「遊び込む」ことが大切です。
遊び込めるおもちゃは,「試行錯誤のできるもの」「シンプルでわかりやすいもの」を選ぶと良いでしょう。
おもちゃ遊びで向上する能力や効果
子どもが遊びの中で培っていく能力は,その特性によって様々なものがあります。
- 身体感覚・機能
- 知的能力
- 非認知能力(想像力・問題解決力・コミュニケーションなど)
先述の勅使千鶴先生は,遊びで伸びる子どもの力として「身体的機能」「知的能力」「人との関係性」をあげています。
遊びの中で子どもは大きく体を動かすことから,指先を使った細かな作業まで少しずつ自分の能力を伸ばすことができます。例えば,幼児期に跳んだり跳ねたり,走ったり,投げたりと単純な動きだけだった遊びは,次第にルールの理解能力の向上とともに「鬼ごっこ」になったり「ドッジボール」になったりと遊びを発展させていきます。
知識や思考力がそなわっていくと,子どもたちは次第に知的な遊びも好むようになってきます。子どもは「迷路」が好きですよね。空間を認識する能力を発揮しながら,クレヨンや鉛筆で迷路を辿っていく遊びはその後の”文字を書く”動きの基礎にもなります。ルールが理解できるようにあると,カルタやすごろくといった遊びからちょっと複雑なボードゲームまで楽しむことができます。
そんな遊びの中で,子どもたちは自分の能力ではまだうまくいかないことや友達同士でのやり取りに苦戦する場面も出てきます。でも,遊びという自由で楽しい空間だからこそ,自発的にその問題に向き合って解決していこうとするのです。
もちろん「鬼ごっこでどう動いたら鬼に捕まらないか」「ボードゲームで勝つためにはどうしたらいいか」「友達と協力して楽しむにはどうすればいいのか」など遊びの中で自然と思考力を発揮する場面も多く見られます。
非認知能力の教育に詳しいボーグ重子さんは,「問題解決力は遊びによって培うことができる」として,ボードゲームや料理などを遊びの中に取り入れることをお勧めしています。
(参考:ボーク重子「「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育」pp.134)
遊びは楽しくやりたい,だから子どもたちは自然とコミュニケーションを活発にさせていきます。
子ども特に赤ちゃんにとっての最初の遊び相手は親や家族といった近しい大人です。初めはあやされたり一方的に”遊ばれる”だけだった赤ちゃんも,生後7ヶ月ごろを境に次第に”やり取り”ができるようになってきます。おもちゃを「とって」「ちょうだい」「どうぞ」と一連のやり取りゲームを大人と楽しむようになります。
成長していくと子どもは親だけではなく,多くの友達と一緒に遊びようになります。自分が楽しむためには一緒に遊ぶ友達も楽しくないといけないことを,子どもたちは本能的に知っています。遊びの中で言葉の伝え方や人間関係の距離の取り方などを自然と学んでいくのです。
子どもにとって欠かせない遊びを媒介する存在が「おもちゃ」です。おもちゃはどんな遊びに使われるか,遊び方,材質や形状なども含めたその特性によって様々な能力の発達を助けてくれる大切な存在です。
おもちゃの効果的な与え方
おもちゃは子どもにとって成長のための重要なアイテムであり,魅力的な存在です。だからこそ,おもちゃの与え方にはちょっとした注意が必要です。子どもの発達を助けるためのおもちゃの与え方をいくつか見ていきましょう。
子どもの発達に合わせたおもちゃを選ぶ
おもちゃは子どもの発達段階にあったものを選びましょう。
ボードゲームは子どもの知的・非認知能力の発達にとても役立ちますが,ルールがまだ理解できない赤ちゃんや2,3歳の子どもでは難しいですよね。
想像力を伸ばすのに良いブロックなど比較的単純なおもちゃでも,素材や形・大きさによって扱いやすさは異なります。子どもの手先の器用さによって大きめのものを選んだり,柔らかすぎるものは手の力加減が難しいので硬いものを選ぶなど状況に応じた選択が大切です。
おもちゃの数は増やしすぎない
おもちゃの数は増やしすぎないことが重要です。おもちゃが多すぎると,子どもは一つのおもちゃで「遊び込む」ことができません。せっかく子どもの成長にちょうどいいおもちゃを選んでも,遊び込めないのではその効果は半減してしまいます。
おもちゃを自分で管理することは子どもにとって自主性を育むためのスタートにもなります。
選ぶ事は、「自分で考える」発点です。「どれにしようかな?」と考えて、「これにしよ」うと決める。この時に子どもの意思も発達を遂げます。この積み重ねが「自分で考えて、決める。決めたことに責任を持つ」と言うあるべき姿に子どもを導いていくのです。
松浦公紀「6歳までに一生を支える力を育む モンテッソーリ子育て 15か条」pp.45
数が少なければ選ぶことも楽になるため,選択の練習になります。自分で選んで管理することは子どもの自主性を発達させます。
おもちゃは子どもが自分でしまえるだけの数に絞っておくと良いでしょう。使わないおもちゃはしまっておいたり,お下がりとして人にあげてしまうことも検討してみると良いでしょう。
かといって,子どもがどんなおもちゃを気にいるか(自分の成長のために必要とするか)は試してみないとわからないこともあると思います。そういう場合は,おもちゃのレンタルサービスを利用したり,近所に「おもちゃ図書館」などがあれば行ってみるのもおすすめです。
キャラクターおもちゃに注意!
子どもはキャラクターもののおもちゃが大好きです。好きという気持ちは,そのおもちゃで遊んでみようと思うきっかけになり,子どもの成長のチャンスを増やします。ただし,キャラクターもののおもちゃには注意も必要です。
キャラクターもののおもちゃの中には「遊び方が固定化されたもの」も少なくありません。子どもの発達をうながすおもちゃを選ぶときには,そのおもちゃでどれだけ遊びが展開できるのかが重要になります。「遊びの可能性や余白」のようなものです。
余白のない遊びはPDSサイクルを回せずに「単なるじゃれ合い」で終わってしまうことが多いです。子どもが自分から考えて,試して,遊んでみないことには子どもの能力は伸びていきません。”おもちゃに遊ばれている”状態になってしまいます。これは電池で動く「動力おもちゃ」でも同じことが言えます。
(参考:新開英二 (1993). 子どもの遊びとおもちゃ げ・ん・き編集部(編) おもちゃの選び方与え方, pp.77-91. エイデル研究所)
おもちゃを選ぶときには,どれだけ”遊びが展開できる余白があるか”も重要なポイントです。
おもちゃの選び方についてより詳しくは「子どもを伸ばす親が知っているおもちゃ選び6つのポイント」もご参考にしてください。
知育玩具は子どもの能力を伸ばすのか?
知育玩具は子どもが楽しみながら能力を伸ばすことができます。ただし,知育玩具で伸ばせる能力はある特定の分野に限られているので注意が必要です。
例えばパズルなら「空間認識力」のように,特定の分野に特化しているからこそ知育玩具は遊びながら能力を伸ばしやすくなるのです。
また,年齢によって必要な知育玩具は絞られます。特に0〜5歳の間の幼児期は日々子どもの能力は変化していき,それに伴って今必要とする遊びも変わっていきます。
知育玩具は「目的」と「対象年齢」が絞られているので,より子どもの発達段階に合わせて選択をしていくことが大切になります。
遊びの主役は子どもです。子どもが今自分に必要なおもちゃを選べるように知育玩具でも選択肢は多く(でも,一度に所有する数は限定して)用意してあげられると良いでしょう。
子どもを一人だけで遊ばせない|おもちゃは親子のコミュニケーションツール
遊びは子どもが他の人の関わり方を覚えたり,関係性を築くチャンスです。遊びの中で子どもを他者とつなげる役割をおもちゃは果たします。
一緒に同じおもちゃを遊び込むことは,親子の良い関係,愛着関係の形成にも役立ちます。
遊びの中で子どもは様々な感情を体験します。楽しい!と思うこともあれば,うまくいかずに悔しい思いをすることもあるでしょう。そんなときに,そばで親が一緒にその感情を受け止めてあげられると子どもの安心感が満たされます。子どもの気持ちに共感しながら,うまくいかない感情などの不安が減少して,安心感が増すことが安定した愛着関係の形成には重要です。
おもちゃを起点にコミュニケーションもとりやすくなります。ぬいぐるみを使って「うさぎさんがいるね」「うさぎさん楽しそうだね」「〇〇ちゃん,うさぎさんの頭なでなでしてるんだね」など会話のきっかけにすることができます。
ぜひ,親子のコミュニケーションツールとしてもおもちゃを使ってみてください。
とは言え,親もなかなか忙しくて時間が取れる時ばかりじゃないもの。そういう時は絵本を子どもが手に取りやすい環境に用意しておくといいでしょう。どんな本を読んでいたのか確認して後からコミュニケーションを発展させることができるのでおすすめです。
子どもの成長に必要な環境のつくり方については,「【非認知能力を伸ばす】子どもが育つ家庭環境づくりの考え方」でも詳しく解説しています。
まとめ|おもちゃは子ども発達の名パートナー
おもちゃは子どもの成長を後押しするとても力強い”パートナー”です。子どもは自分の成長に必要なパートナーを自分で選ぶ力を持っています。
(子どもが自分で自分を成長させる力について詳しくは「子どもの成長を支える「遊び」の意味と力」もご覧ください)
大人は子どもの自分自身を成長させる力を信じ見守りながら,子どもが選択するための環境づくりを手伝ってあげましょう。子どもにとって遊んでほしいおもちゃも,子どもが自分で選べる環境に”さりげなく”おいておくことが重要です。
おもちゃを選ぶときの注意点は,
- 発達段階にあったものを選ぶ
- 数は増やしすぎない
- キャラクターものや知育玩具は使い方を注意する
- コミュニケーションツールとしておもちゃを使う
ことです。
人と人の関わりを深めて,発達をうながしてくれるおもちゃ。ぜひ親子で一緒に「遊び込んで」いってください。
参考文献・サイト
勅使千鶴. 1999. 子どもの発達とあそびの指導. ひとなる書房
新開英二 (1993). 子どもの遊びとおもちゃ げ・ん・き編集部(編) おもちゃの選び方与え方, pp.77-91. エイデル研究所
ボーク重子. 2018. 「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育. 小学館
松浦公紀 2022. 6歳までに一生を支える力を育むモンテッソーリ子育て15か条. 幻冬舎
数井みゆき・遠藤利彦(編著) 2005. アタッチメント 生涯にわたる絆. ミネルヴァ書房
るるぶWEB|おもちゃが無料で借りられる「おもちゃ図書館」とは? 東京都内だけで40ヶ所以上あり